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文房具へのこだわりとクオリティライフ 板坂元『鞄の中の仲間たち』より

文房具へのこだわりとクオリティライフ

板坂元(1997)『鞄の中の仲間たち』経済界

この本のまえがきに1990年代半ば以降の文房具人気について以下のような文章がある。

文房具の歴史に転換期が訪れて来たようだ。(中略)若い人たちの間に古い文房具に対する郷愁が、少しずつ芽生えて来ている。フリーマーケットなどで、昔のインキ瓶が人気を博したり、戦前の小学校の筆入れ(筆箱)もコレクターズ・アイテムになっている。そういう風潮の中で、復古調といってもよいような傾向が顕著になってきている。

 この本は、タイトル”鞄の中の仲間たち”とあるように、文房具に限らず筆者の知識・経験から鞄の中の”モノ”へのこだわりが語られている。文庫本、香水、ネクタイ、鉛筆、万年筆、ハンカチ、腕時計、大学ノートなどなど、鞄の中に入るモノが対象だ。筆者のモノに対する考え方は、『文房具が好きな人の本』に書かれているように、モノが生活の質を高めるものということである。この本には、生活の質、クオリティ・ライフに対する語りはない。筆者の生活に対する哲学があっての、モノへのこだわりがある。この本だけ読む人には、なかなか筆者の考えが伝わらないかもしれない。

生活の質や知的生活といった内容は堅苦しい。シンプルに「文房具」や「鞄の中の仲間」と書いて正解だったのだろう。

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