仕事術は仕事を機械的作業として行うこと
渡部昇一(1979)『続・知的生活の方法』講談社現代新書
この本は、以下の5章から構成されている。
- 第1章 日本の知的生活の伝統
- 第2章 知的生活の理想像
- 第3章 仕事のしかたとライブラリ
- 第4章 知的独立について
- 第5章 知的生活と表現
この『続・知的生活の方法』は、全体を通じて、研究者としての筆者の経験が前作以上に語られている。前作は、知的生活における精神論、行動論、空間論、時間論が主たるテーマとして語られ、一般人でも”知的生活の真似事”をしようかなと思える内容でもあった。しかし、この続編は、世界でも最高の知的生活をおくった偉人らの紹介とそれをトレースしたかのような筆者の知的生活についての深い語りである。一読すると、自分には到底真似をすることができない世界最高の知的生活の姿をうかがい知ることができるようである。
今回は、第3章の仕事のしかたとライブラリーについて感想を書いてみたい。
この章のキーワードは、「機械的な作業」、「勤勉」、「書きはじめる」、「仕事術」である。勤勉さをもって、仕事を機械的な作業として行うこと。これこそが仕事術であり、そのコツは、「まず、書き始めること」、「やり始めること」なのである。筆者は哲学者カール・ヒルティの言葉を引用しながら知的生活のコツのひとつを紹介している。p.86から89までは、何度でも読むに値する文章だと思う。
「まず何よりも肝心なのは、思い切ってやり始めることである。仕事の机にすわって、心を仕事に向けるという決心が、結局一番むずかしいことなのだ。・・・・以下、つづく」
毎日の仕事にあっても、①職場に行く⇒②机の前に座る⇒③心を仕事に向ける、というプロセスのなかで、③がやはり難しい。実体験としてそう思う。つまり、”心を仕事に向ける”ことが、機械的な作業として毎日の生活のなかで実践できれば、充実した仕事生活(?)・知的生活に一歩近づくことになるのかもしれない。個人的には、このように解釈している。