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文房具は高い文化を育てるもの 別冊暮らしの設計NO.10『文房具の世界』より 

文房具は高い文化を育てるもの

別冊暮らしの設計NO.10『文房具の世界 手になじんで放せない文房具を求める人におくる、新しい発見のために』中央公論社

この雑誌には、笠井一子、八木佐吉、野沢松男、磯山久美子、岡野純子、細木元生、小川後楽らのエッセイとともに、鉛筆や万年筆、マーキングペン、手帳、便箋、タイプライターなどカラー写真とともに掲載されている。彼らのエッセイだけでも、かなりのボリュームがある。本当に昔の雑誌は一冊にかなりの情報量を詰め込んでいる。

この本のなかに、”文房具には夢があるんです”と題した、伊藤義孝氏(当時の伊東屋会長)と福田浩治氏(当時の文適堂社長)の対談が掲載されている。

この対談で、伊藤氏が文具についての思いを語っている箇所に、「高い文化を育てる文具」という言葉がでてくる。その箇所を引用してみる。

「われわれ文具屋の仲間で、スローガンをこしらえたことがあるんです。『高い文化を育てる文具』というのですが、私は気取るわけじゃないけど、文具というものは文化とは大いに関係があると思います。」

文化の発展をシンプルに考えれば、文字を書く=モノ・コトを創る=見える化する⇒人々への影響・広がり⇒文化の発展というプロセスであろう。

最初のプロセスである文字を書くという行為自体に対して大きな影響を与えるのが文房具だ。一瞬のインスピレーションやひらめきをいかに記録して、見える化しておくか。それを支えてくれるのが文房具だ。その意味では、文房具を創る人の熱意が文化を支えてきたともいえる。

万年筆で文字を書くことから、キーボードで「文字を打つ」ことに変わりつつある。しかし、文字を書くというのは、創作の後半フェーズだと思う。実際にモノを書き始めるまでのプロセスの方が長い。創作者は、モノを集め、観察し、考える。その繰り返しのなかで新しいモノの構想ができる。文房具は、「書く」ということを支えるばかりではない。最近の文房具には、書く前のプロセスである「集める」「観察する」「考える」というフェーズを支えるものも多くなっている。

さらに、長期間の保存に耐えるような紙やインクもあり、創作物を時間から守るのである。

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