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文房具とは使う者の心をときめかせるモノ 市浦潤『文房具』より

文房具とは使う者の心をときめかせるモノ

市浦潤(1986)『文房具』新潮文庫

1986年に新潮社から出版。
この本は次のように紹介されている。

文房具、身近な小道具でありながら、これほど使う者の心をときめかせる物はない。ちょっとした使いこなしがその価値を決めるどうすればこの小さな道具が創造力の源泉になりうるのか。ブランド指向やアンティーク趣味もいいけれど、情報化時代を先取りして、この名脇役をうまく演出してみないか。夢をもてあそびつつ、デイリーライフをレベルアップするソフトウエア・ハンドブック。

この本の前半部分は、文房具の紹介が中心である。写真が多く掲載されているので、1980年代の文房具たちを懐かしむことができる。
また、
万年筆の項には、1970年~80年代当時の万年筆を取り巻く厳しい環境が書かれている。

万年筆は機能性が追求される時代の孤高の筆記具である。
最近では、万年筆はオフィスや学校ではあまり使われなくなってしまった。カーボン文化の発達や、すべてスピードアップした時代とは相性が悪い筆記具と言えるのかも知れない。軽量、使い捨て、ノック式が主流の筆記具の世界にあって、何ひとつその条件を満たさないのが万年筆である(p.46)。

1980年代のスピードアップした時代から、さらに加速した昨今においては、万年筆は誰も見向きもしない文房具かといえばそうでもない。最近では万年筆が復権してきている。高級万年筆から子ども用万年筆まで、高品質の製品が手軽に入手できる時代である。
デジタル機器を使いつつ、万年筆も使用する。

この本の後半部分は、著者がアメリカで出会った文房具をテーマにしたエッセイだ。この中で著者は、アメリカの代表的な文具であるリーガルパッドが紹介している。

リーガルとは、紙のサイズの規格という意味ではなく、弁護士や裁判官が使うということでのリーガルだという。イギリスの二つ折りの紙が弁護士の使う標準的なモノであった時代に、横罫で、左に赤マージンの線を引いて、上部を糸で綴じ、ミシン目を入れたものを作ってほしいという要望を、バルチモアの裁判官がステーショナリー・ストアを通じてアムパッド社に持ち込んだのがそもそもの始まりであった。しかし、このときすでに紙が黄色だったか、裁判官が黄色を望んだかは、判明していないということだった。

近頃は、日本でも大学の図書館などで黄色いリーガルパッドを使っている人を時々見かける。弁護士、裁判官志望の学生だけではないだろう。

参考情報

アメリカのイエロー・リーガルパッドとその歴史~35年前の雑誌『文房具事典』より

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