文房具本

文房具は単なる「道具」を超えた何かを持っている 野沢松男『現代筆記具読本』より

文房具は単なる「道具」を超えた何かを持っている

野沢松男(1983)『現代筆記具読本』文研社

b8b5f820-s

この本は、著者である野沢氏の「筆記具と何だろう」という問題意識を基底にしながら、万年筆、インキ、ボールペン、水性ボールペン、シャープペンシル、シャープ芯、鉛筆、マーキングペンなど筆記具について具体的かつ詳細に考察している。

「そもそも論」に対する筆者の考えが随所に見られます。

日常生活の中で欠くことできない用具はいろいろとあるが、その中で筆記具は他の用具と少々趣きを異にする。単なる「道具」を超えた何かを持っているからだ。一般の道具が、便利性とか機能性とか、また一方ではその物に付随する思い出や希少価値などで愛着度が判断されるのに対し、筆記具は、もちろんそういった価値意識はあるにしても、その上に自己の持つ「心の創造の具現化への期待」という別の価値を持っている。そこに他の道具と異なる大きな意味あると考える。

筆者がいうように、文房具は”単に文字を書く”という道具以上に、”創造を助けてくれる道具”である。デジタル機器が発達した昨今においても、筆記具というものは存在している。紙に文字を書くという機会は確実に少なくなり、キーボードで文字を入力するという作業が極端に多くなった。単なる作業には、マウスとキーボードは非常に便利だ。

しかし、創造には文房具が有用だ。自分の考えたことが直接手に伝わり、紙に表現できる。個人的にもマウスとキーボードでは何かその連携がうまくとれていないような気がする。思ったことが表現できていない気がする。機器の制約によって表現が影響をうける?もちろん、入力の上手い下手も影響していると思うが。思考と作業が結びつけるというとても重要な役割を果たしているものだと思う。デジタルで記録できる機器がたくさんあるにもかかわらず、創造するとき、思考するときには、紙と鉛筆(筆記具)を使う人は少なくない。思考の作業の連続性が重要なのであろう。もちろん、今後デジタルデバイスが人間の思考にどのような影響を与えるのかについてさらなる研究が進み、思考と作業・記録が直結するツールを期待したいものだ。後半の「持物として価値のある筆記具いろいろ」の項では、筆記具に施された装飾について考察している。

この本には、筆記具には「持物としての価値」と「それを使って"価値を生み出す"という価値」があることが示されている。所有することやそれを手にとり眺めることで満足感を得るという価値。また、道具として駆使して価値を生み出す価値。

インターネットがなかった1983年に書かれた本だが、デジタル時代において読んでも、何かを得ることができる本である。

スポンサーリンク




-文房具本

Copyright© 知とモノへの雑感ブログ , 2020 All Rights Reserved Powered by STINGER.