文房具本

自分と因縁のあるモノを使う 鳥海忠『知的作業の道具をさぐる こだわり文房具』より

自分と因縁のあるモノを使う

鳥海忠(1987)『知的作業の道具をさぐる こだわり文房具』光文社

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1987年に光文社から出版。およそ30年前の本ではあるが、同時代を過ごしてきた人であれば、その内容に共感することは少なくないはずだ。カラー写真は掲載されていないので、文房具を”見せる本"ではない。

まえがきに筆者の主張がはっきり書かれている。

「手紙を書く、文章を作製する、メモをとる、スクラップを貼る、ノートに記すといった行為の総称としての知的作業に必要な道具として文房具は太古から存在した。(中略)いい職人はいい道具を揃え、その気に入った道具でじっくり仕事をするという。いい道具が見つからない場合は、いまある道具を改良したり、道具を自作して仕事にそなえるということを何かで読んだ。私が文房具に求めるところのものも、とにかくいい道具が欲しいということに尽きる。(中略)文房具に関して日ごろ思っていることや感じていることをまとめたこの本が、世の多くの文房具好きな人々に役立つことを私は心から願うものである。そして何かひとつでも役に立てば、私としてはこんなうれしいことはない。」

著者のこだわりは第1章の万年筆の項に書かれている。「曰く因縁のあるいものだけを身の回りにおくべきだという考え方を持っている。(中略)曰く因縁のあるものとはどういうものかといえば、とにかく自分にとってこれでいいと言いきれるものでなくてはならないということである。」。

自分が生きてきた中で身に着けた感性にあうものだけを使う。感性を信じてモノを選択するということだ。それは、感性と知的作業が非常に近いものだから。知的作業に使う文房具へのこだわりが知的作業そのものに大きな影響を及ぼす。

感性・知的作業・文房具を大事にせよということか。もちろん、文房具に限ったことではないだろう。あらゆるモノへのこだわりが、それを中心とした生活を豊かにする。職人は道具(モノ)にこだわるように、それは仕事でも、趣味でも同様であろう。そのこだわりが、職人生活、趣味生活を豊かなものにしていくのである。このこだわりは、決してモノへの執着とは明確に一線を画しているのであろう。

こう考えると、身の回りのあらゆるコトやモノにこだわりを持つことが、生活そものを豊かにする可能性をもつということである。知的生活のみならず、生活全体の質が上がることになるのであろう。

本書の構成は以下のとおりである。

  • 第1章「書く」では、万年筆、ボールペン、鉛筆、筆箱、消しゴム、手帳など
  • 第2章「文房四宝とその周辺」では、墨、硯、毛筆、便箋、算盤など
  • 第3章「道具Ⅰ」では、ものさし、ハサミ、接着剤、ペーパーウェイト、砂時計、地球儀など
  • 第4章「道具Ⅱ」では、ワープロ、カード電卓など

 

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