知的生活に役立つ文房具とは? 生活システム研究会『知的文具図鑑』より
この本は、”知的生活のために道具をどのように選ぶのか”という内容であり、1980年に立風書房から出版された。今から37年前の知的生活に関するものであり、趣旨は以下のように書かれている。
「この本は、知的生活を送ろうと志す若い人々に、さまざまな側面から、ヒントを得たり、アイデアを汲みとってもらいたいという意図のものに編まれた。(中略)編者の志向する知的生活は、道具はあくまでサブであり、それ以上のなにものでもないのである。」
文具のカテゴリーにとらわれず、実用的な面から、実践的な道具の選び方や使い方が詳しく書かれている。
この本を読むと、1970年代の知的生活とはどのようなものであったのかを垣間見ることができる。当時のアナログの知的生活は、”いかに記録するか、そして記録したものをいかに分類整理するのか”といったことが基本にあった。記録と分類を効率的に実現するために、いかに文房具を活用するかが多くの人が抱えるテーマだったのである。効率的に記録し、それをいつでも使える状態にしておくために、文房具を最大限活用しようということだ。
ネットの普及と書籍のデジタル化によって情報を集める作業は飛躍的に容易になった。日本でも専門的な論文もオンラインで手に入れられるものが多くなった。誰もが同じような情報を集めることができるようになり、集める情報そのものには大きな差異がなくなったといえる。
デジタル化により、”情報を集めて記録すること”から、集めた情報を”いかに使うか”に力点が置かれるようになったことは当然の流れであろう。そこから、人間のクリエイティビティを生かし、いかにユニークなアウトプットを創造するかが課題となっている。
さて、この本には”知的生活とは何か?”という問いに対するひとつの答えが述べられているので、それを紹介する。知的生活を明確に定義しているのである。これによれば、知的生活とはいくつかの条件が満たされている生活のことをいうらしい。その条件とは以下のような、日常生活の中で実現することが非常に厳しい(?)ものである。
- 「知的でありたい」という意欲に充ち満ちた生活
- 計画性のある生活
- 工夫し、創造する生活
- 情報を集め、分析する生活
- 遊びと余裕のある生活
- パフォーマンス・アートとしての生活
- 芸術としての生活・知的生産物を交換しあう生活
- 啓発・向上と自己実現
以上の8つの条件を満たす生活が知的生活というらしい。これらの条件を満たした生活を実現するためには、個人としてかなりのリソースを有していなければ難しいのではないか。ここでは、ひとつの理想形として理解したい。
内容に興味があれば参照されたい。この本は序章を含めて7章構成になっている。
はじめに
序章 知的に生きるための条件
・知的生活の種々相
・知的生活とは何か?
・知的生活の適格者
・知的度判別法
・知的生活の基礎条件
・知的に生きるための心がける5カ条
第1章 情報を集めるための用具
・スクラップの用具
・取材の用具
・身近な情報源
第2章 情報を整理するための用具
・整理用箋を選ぶ
・カード式整理法
・ファイル用具
・複写・印刷用具
第3章 知的環境を創るための用具
・机のまわりの環境づくり
・文房具の楽しみ
・天井と壁を活かす
第4章 知的に遊ぶための用具
・知的ゲーム類
・知的ホビー
・コレクターズ・アイテム
第5章 知的生活を演出するための用具
・知性の自己表現
・知性を演出する小物時間を有効に使うための用具
・知的な食生活
第6章 創造活動を楽しむための用具
・筆記具と紙
・アイデアを練る
・辞典と辞書
・企画を仕上げる用具