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渡部昇一・和田秀樹(2001)『痛快!知的生活のすすめ』ビジネス社
この本は、以下の11章からなっている。
- 第1章 知的生活への憧れは、子供時代に
- 第2章 一生勉強しなければいけない時代の到来
- 第3章 知的生活こそ長生きの秘訣
- 第4章 暗記力は、いくつになっても鍛えれば高まる
- 第5章 「これがわかれば面白い」式教育
- 第6章 横からも入れるエリートコースが必要
- 第7章 蓄積された知識が新しい発想を生む
- 第8章 よい師との出会いが人生を変える
- 第9章 ものの見方を変えるトレーニング
- 第10章 会話中心の英語教育では意味がない
- 第11章 批判されたこそ新しい世界は開かれる
この『痛快!知的生活のすすめ』は、英文学研究者の渡部氏と医師である和田氏の対談形式の本である。
この本では、全体を通じて、これから(2000年代前半以降)の日本人には知的生活をべースにした勉強・学習が大切であることが述べられている。そこには、”知的生活と健康との関係”や、”暗記力の鍛え方”や”日本の英語教育”などといったいくつかの論点にからめて知的生活が語られている。この本は、一貫して”知的生活とは何か”を教えてくれるような教科書ではなく、知的生活を送っている筆者たちによる知的生活に関する経験とコメントが中心の本である。
直接的な知的生活の解説本ではないので、渡部氏の著書『知的生活の方法』なで知的生活とはどんなものかを、前提知識として知っておくと、面白く読める本だと思う。知的生活とはどのようなものなのか、について前提知識がないと、単なるインテリの対談と解されるかもしれない。それはそれで個人的には面白いが。
今回は、第9章の「ものの見方を変えるトレーニング」について感想を書いてみたい。
この章のキーワードは、「出力」、「情報」、「知識」である。和田氏は、「大事なのは出力のトレーニングであり、日本人はもっと自分の考えの発表の場を積極的に活用すべしという。そして、情報を知識にするための有効な手法が出力であるという。また、渡部氏は知識を出すことによって、より多くのインプットが可能になるという。頭の中をからっぽにするまでアウトプットを行うと、そのあとに新しいものがスムーズに入ってくる、ということのようだ。
ここに、知的生活を長期間にわたって継続していくコツのようなものが書かれているような気がする。常に読書をし、インプットだけをしていては継続は難しいか、または、インプットの効率が落ちてくると思われる。インプットと同時に、自分にあった発表の場(アウトプット)をもつことは、知的生活の継続に不可欠なものであろう。アウトプットは、インプットで得たものをもとに自分の枠組み、軸をつくることだ。アウトプットをして、はじめて自分のモノを見る枠組みに気づくかもしれない。つまり、アウトプットにより、自己理解が進むということである。どんなモノ・コトに対しても、どんな稚拙であっても、自分なりの見方≒枠組みを持つことが大切なのだろう。それは継続していくうちに、変化していくものであるからだ。
結局、知的生活の目指すところは、インプットとアウトプットを繰り返しながら、「自分の哲学をもつ」、「その哲学にもとづいた様々なコト・モノに対する見方を確立する」、「現実のあらゆる現象を自分の視点から見る」 ということことではないか。これを繰り返すことが大切なのであろう。これは、あくまでも目指すところであって、完成することはない。継続するなかで、いつの間にか自分の見方が変わっている。そんな体験ができるのであろうか。
この本は2001年の発行であり、今から15年も前の本である。その後のHP、ブログ、SNSの普及により、個人の意見を発信する場やツールが身近なものになった。あまりに簡単に情報を発信できるため、いろいろな弊害も生じているようだ。アウトプットの手段は増えたが、情報発信が知的生活のアウトプットとは限らないのは当然だ。
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