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1970年代における「万年筆の品質」とは? 大坂頴一氏の論文から

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1970年代における「万年筆の品質」とは?

大坂頴一(1975)「万年筆の価格」『品質管理』Vol.26,No.6

この論文は、1975年に出版された『品質管理』Vol.26,No.9に掲載されたものである。いわゆる、学術的な専門雑誌、ジャーナルである。筆者は当時パイロット万年筆株式会社の販売企画部に所属していて、まさに1970年代の万年筆製造・販売の最前線にいた方であり、この論文では万年筆の品質と価格について言及している。

画像 大坂穎一「万年筆の価格」

万年筆の品質を決定づける要素については、様々な場で、また様々な角度から議論されている。それは当然のことで、万年筆が製造、販売され、使われるというプロセスにかかわる人たち、それぞれの人たちにとって万年筆の品質とは異なる可能性があるからだ。たとえば、昔は職人が思い描く品質とユーザが思い描く品質は異なって当たり前であり、職人のえがく品質が重要だった。本ブログでもたびたび紹介している梅田晴夫氏も理想の万年筆になかなか会えず、結局はメーカーとの共同によって万年筆を作り上げていることがひとつの証左でもある。(梅田氏にとっての理想の万年筆<プラチナ万年筆#3776>)。

この論文では、様々な万年筆の品質の議論があるなかで、1970年代の万年筆の製造・販売の最前線にいた筆者は万年筆の品質”を「書く機能」、「インキの補給機能(※)」、「堅牢性」、「携帯性」、「修理性」に整理している。最近の傾向とは異なり、「堅牢性」や「修理性」が特徴的となっている。現代においては、万年筆はその名のとおり大切に扱ってさえいれば、相当な長い時間使用できることや壊れたら修理できることは当たり前と思われている。その意味からも、当時の製造・販売の現場で何が重要視されていたかをうかがい知ることができまる。

※カートリッジ式はアメリカのウォーターマンにり始まり、その後日本、ドイツ、イタリア、フランスへと世界的に普及したと記述されています。

大坂頴一(1976)「万年筆」『品質管理』Vol.27,No.9

画像 大坂穎一の「万年筆」

筆者がこの論文でいいたことは、「店頭でのためし書きの際の9つの注意点」と「万年筆をいつも気持ちよく使い続けるためのコツ」だ。

店頭でのためし書きの際の9つの注意点

  1. 自分がいつもペンを使用する時の持ち方と動作で新しい万年筆の「ためし書き」をして選ぶようにする。
  2. 文字の太さはどうか、ペンの弾力紙面のスベリ具合はどうか、軸の太さ重さはどうかに注意する。
  3. 主に原稿書き用に使うのか、手帳用か、または横文字用なのか、使う目的を考えて選ぶこと。
  4. 贈り物にするならば、贈られる人の好みはどうなのかに思いをむける。
  5. 万年筆売場の人によく相談する。
  6. 選んだ万年筆のインキの補充方法はどうするか、その場で正しく理解する。
  7. もしも万年筆の具合が悪くなった時はどうすればよいかをその場で聞く。
  8. 使用中の万年筆の手入れ法なども聞く。
  9. 選ぶ時に使用中の好みの万年筆を持っているなら、それと比較してみる。

万年筆をいつも気持ちよく使い続けるためのコツ

万年筆を30分以上使用しない時は、必ずキャップをすること、携帯するときは、クリップが垂直になるように注意すること、インクがスムーズに出ないときはぬるま湯で洗うこととしている。要するに、万年筆を長持ちさせるコツは丁寧に万年筆を洗うことが大切だということだ。

この論文に書かれていることは、今では広く知られていることかもしれないが、1970年代という、おそらく万年筆に関する知識を容易に入手することができなかった時代に、やさしくかつ簡潔に説明してくれているこの論文はとても価値があったと思う。ちなみに、梅田晴夫氏による『The万年筆』(読売新聞社)は1974年の発行である。

最後に、筆者は言葉を引用する。

「万年筆が筆記具の王者と言われるのは、書き味が私達の個人的情緒性を他のどんな筆記具より最も高い満足感を持たせてくれるからである。」

「正しく選び、正しく使うならば、いつまでも人生の道連れとして、二心胴体の一つとしての価値ある筆記具、これが万年筆である。」

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