万年筆選びは書き味とデザインのバランス
中園宏(1985)『世界のアンティーク万年筆』講談社
1985年に講談社から出版。
“まえがき”に次のような文がある。
「この感動が切っ掛けとなって、私は万年筆というものに強く興味を抱くに至った。少しずつ集めてゆくうちに時代時代のデザイン、材質、機構などの変遷や装飾の美しさに魅せられていった。しかし、集めるうちに、万年筆の起源がそれほど古いものではないことに気づき、少しオーバーな言い方かもしれないが、万年筆というものを歴史的に系統だてて収集し、後世に遺してみようと決意した。」
図版ページに、ウォーターマン、パーカー、シェーファーをはじめ日本の万年筆やソ連や中国の万年筆を紹介するとともに、万年筆の歴史として、西洋万年筆と国産万年筆の歴史、ペン先の種類についても言及している。
万年筆の選び方について、中園氏のコメントを引用する。
「万年筆を選ぶ場合、書き味に重点をおくか、デザインに重点をおくか、の二通りが考えられるが、万年筆が書く道具である以上、「書き味」を度外視するわけにはいかない。すなわち、どちらの方が重点の度合いが大きいかということになる。したがって、万年筆を購入する際、あらかじめ、自分は書き味に重点を置くのか、それともデザインに重点をおくのか決めてかかる必要がある。書き味に重点をおく場合、それを強く求める人ほど選ぶのもむずかしいわけだが、書き味は書く人の手の大きさ、筆圧、筆記角度、書く速度などによっても各人まちまちで、かなりの違いがあるものである。」(中園,1985,p.122)。
万年筆の選び方
中園氏は「デザイン」と「書き味」とのバランスが万年筆選びには重要と言っている。ただ、もうひとつ付け加えるならば、価格であろう。価格は当然、ブランドとも大きくかかわる。
価格という予算制約のなかで、デザインと書き味のバランスを考えることが必要だ。
内容は、機会があったら読んでもらうとして、この本は個人的には思い出深い。
出版は1985年だが、私は90年代になってこの本を知り、神保町や早稲田の古本屋で探したが手に入れられなかった。古本検索にもネットが使えるようになって、ようやく手に入れられたという本だ。