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日本伝統の「赤」で塗られたセーラー万年筆 "KAN"

日本伝統の「赤」で塗られたセーラー万年筆”KAN”

この万年筆は、セーラーが還暦を迎える人を対象に発売したものである。KANは還暦(KANREKI)のKANであろう。この万年筆には、キャップ・胴軸・天冠・尾栓に全て異なった日本古来の3色の赤が使われているのが特徴である。

日本古来の伝統的な「赤」とは

日本の伝統の「赤」色には、「紅梅」「紅」「蘇芳」「茜」「朱」「緋」などがある(ほかにもいろいろある)。ここでは、この6色を簡単に紹介しておきたい。以下の色を表した文字は16進で表した色である。

朱(丹)(しゅ・に)

黄みを帯びた赤色。古代では赤の典型とされた色。古くは丹(に)といわれた。また、丹は天然の朱(辰砂)から生じた赤の色名としても使われた。朱色はもっとも古い色の一つで、縄文時代には土器や土偶にも使われている。朱には腐敗を防ぐ効果があることに加えて、呪術的な意味や生前の権威を重んじて用いられたようだ。

茜(あかね)

茜の根を染料とするややくすんだ濃い赤色。日本には2~3世紀ごろ中国から伝えられた。卑弥呼の時代には茜染が行われていたという。『万葉集』には、この茜を詠んだ歌が多いそうだ。「茜さす」は、額田王や柿本人麻呂の歌に枕詞として登場する。

紅(べに)

紅花で染めた鮮明な赤色。紅花の原産地は中近東、エジプト。4~5世紀ころ、中国を経て日本に伝えられ、当時の主流であった茜から、紅花で染めた紅色が流行した。

紅梅(こうばい)

平安時代からの色名で、紅梅の花に由来する少し青みのある薄赤。薄い藍で下染めをし、紅花で染める。『枕草子』や『源氏物語』にも出てくるように、紅梅色は明るく優雅な色として平安の人びとに愛用されていたそうだ。

蘇芳(すおう)

南アジア原産の蘇芳の心材を煎じた液で染める紫がかった暗赤色。飛鳥時代に伝わって以来、重要な赤色染料として盛んに使われたらしい。『枕草子』や『今昔物語集』にも登場する色だという。江戸時代には、蘇芳は紅花や茜の代用として使われた。

緋(ひ)

茜で染めた黄みのある濃い赤色。江戸時代には、梔子(くちなし)の黄色で下染めし、その上に蘇芳で赤を染め、鮮やかな緋色に仕上げたそうだ。江戸時代にはこの色が流行した。

万年筆『KAN』の特徴

天冠が最も暗い赤。キャップ、胴軸に向かって、明るい赤になる。どこにどの色が使用されているかは、公式サイトには説明がない。
キャップをしめている状態は、どちらかといえば落ち着いた地味な印象を与えるが、キャップを胴軸の後ろにさすとペン先の金と胴軸の明るい赤が映えて、一気に明るくなる。

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カタログ値は以下のとおり。(還暦万年筆 KAN | セーラー万年筆 |公式ウェブサイトより)

  • 中字
  • ペン先       21金、24金メッキ仕上げ、大型
  • 蓋・胴・大先       PMMA樹脂/レッド
  • 金属部品            24金メッキ仕上げ
  • 本体サイズ         φ18×129mm
  • 本体重量            21.6g


外箱は赤色
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万年筆本体(コンバーター装備)、ボトルインクジェントル(ブルーブラック)、サービスカートリッジインク(ブルーブラック)、説明書、品質保証書など。
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日本古来の3色の赤のグラデーション。天冠が最も暗い赤。キャップ、胴軸に向かって、明るい赤。
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キャップは落ち着いた赤。
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天冠はもっとも暗い、どちらかといえば茶に近い赤。
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ペリカン万年筆”Indian Summer”との比較

  • 長さ(”KAN”:129mm  ”Indian Summer”:136mm)
  • 胴軸径(”KAN”:13mm  ”Indian Summer”:15mm) いずれも実測

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両万年筆ともに中字(M)。

ペリカンの中字と比較すると、KANの方が細い線が書ける。

パイロットの iroshizuku<色彩雫> tsutsujiでテスト

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雑誌『Lapita』(2006,小学館)付録の万年筆との比較

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『Lapia』付録万年筆の赤はKANの胴軸の赤よりもかなり明るい派手な色。

 

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