1950年代の万年筆のペン先の素材
国岡孝之(1954)「万年筆用ペン先について」『広島縣呉工業試験場報告』No.5
これは、1954年に『広島縣呉工業試験場報告』に掲載された論文である。筆者は、冒頭で万年筆のペン先について次のように述べる。
万年筆用ペン先は、戦前は殆ど金ペンであったが、戦後は大部分白ペンと言われる不銹銅製です。先付金属(先端につける硬い部分)は種々研究され、金ペン、高級なる白ペンを除いてはイリジウムを使用しない程度に進歩した。
内容は当時の万年筆のペン先の製造に関する考慮点、摩耗度と形状の関係についての実験と考察である。「万年筆用ペン先の製造工程」、「万年筆の規格」、「滑り、形状、寸法、その他」、「供給材料と試験方法」、「試験結果と考察」、「結言」からなる。かなり専門的である。
製造工程
当時のペン先は以下の工程で行われたいたらしい。
- 切断
- ロール
- 検査
- 打抜
- ハート抜
- マーク打
- 曲げ
- 先付
- 荒取り
- 荒磨き
- 先割り
- 仕上げ
- 玉磨き
- 仕上磨き
- 検査・箱詰・包装
万年筆規格
当時、ペン先の品質には、高級品、上級品、中級品という3つがあったらしい。ちなみに、高級品は、14金以上で尖部に耐摩耗性を有する優秀な合金を溶着したものであり、キリ目の左右が不機能でなく、かつ先端は仕上げ磨きが優秀であることだったらしい。
滑り・形状・寸法・その他
万年筆使用の条件を引用する
筆記の際ペン先にかかる荷重は弱書きで約20g、はね等で100gを超える事もあり、インクの出の良し悪しにもよるが、連続50gというのはやや弱書の部類である。
筆記速度について言うと、だいたい普通の人がノートを取る速さで一分間約4mで、100m書くと字数にして和文仮名交りで、4万字以上で之に要するインクは約3ccである。