世界最高峰の機械式時計の世界を松山猛氏が解説する『おろろじ』
松山猛(1994)『おろろじ』風塵社
この本は、こちらの記事で書いた通り時計に関心を持ち始めた頃に購入したものである。長い間書棚にうずもれていたが、久しぶりにぱらぱらめくってみた。
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(1990年代の個人的な時計の思い出を語った記事)
上の写真の万年筆はペリカンのIndian Summerである。
「時計は時間の模型です」で始まる時計をテーマにした筆者の蘊蓄が語られるエッセイ集。構成は、「序にかえて」、「第1章メカニズム動く鉱物」、「第2章マイスター記」、「第3章ブランド・ストーリー」である。
筆者は時計を”時を測る”という人間の叡智の結晶と位置づけ、第1章では複雑時計であるクロノグラフの解説をする。第2章では、複雑な機械式時計のマイスターたちの偉業の話だ。ここでは、若き日のフランク・ミュラー氏も紹介されている。そして、第3章は、複雑時計を作り続けるブランドの紹介である。
本書全体を通して、筆者のまじめさが全面に出ている。文献渉猟、現地調査、インタビューなど独自の丁寧な取材を通して得られた筆者による世界最高峰の機械式時計についてのエッセイだ。20年以上前の記事であるが、今ではその内容はとても貴重なものとなっている気がする。そして、あとがきには、筆者のこの本に対する思いが長い間、真剣に時計に向き合ってきた筆者の熱い思いが語られる。なお、資料として時計史年譜も掲載されている。
本書の帯びには、「時計を愛するすべての人たちへ送る」とある。しかし、この本は読む人を選ぶ。読み進めるためには、時計に関する知識が前提となる。知識がないと、筆者の語りの価値がわからない。逆に、知識があれば、かなり楽しめる本だともいえる。
これを書いている管理人自身もこの本の真価を評価できないのであるが、備忘録として感想を保存しておく。