万年筆のペン先が曲がっても素人は絶対触ってはいけない
万年筆のペン先を修理した経験を記録しておきたい。
ビスコンティ『ボイジャー・アニバーサリー・デモンストレーター』(1999)
ビスコンティはイタリアの万年筆ブランド。「ボイジャー・アニバーサリー・デモンストレーター」を2000年頃購入。デモンストレーターはインクの残量が常にわかるのでとても便利である。購入当初から普段使いしていた万年筆であった。
このビスコンティの万年筆は、キャップを尻軸に装着すると、尻軸の重みによって書きづらかったので、普段からキャップは尻軸に装着せずに使っていた。軸が丸いのでキャップをつけなければ当然転がる。ある日、机の上を転がり、70cmの高さの机から床に落ちてしまった。ペン先から落ちたのだろうか。ペン先にかなりのダメージがあり、まったく文字が書けない状態にまで曲がってしまった。
普段使いのモノ、とくに大切にしているものが壊れるというのはショックである。しかも自己責任。どうしようもない。曲がったペン先を見ていると、”力を入れれば真っすぐに戻せないか?”という気になってきた。しかし、高価なものである。もしペン先が折れたら?という考えも頭をよぎる。かなり動揺していたと思う。しばらく時間がたち、落ち着いたところでペン先の修理先をネットで探した。比較的簡単に見つかった。早く探せばよかった。
なぜか、修理ということがすぐに頭をよぎらなかったのである。早速依頼方法を熟読する。郵送で可能とあったので、早速翌日送付した。
修理の期間は2週間ぐらい。幸い文字が書ける状態にまでペン先は復活した。修理を担当した方から、「曲がった場所を無理に力を加えなかったのが幸いでした」というコメントをいただいた。
ペン先が曲がったときに、素人が無理に力を入れてしまい、修復できないことが少なくないのかもしれない。
何らかのアクシデントでペン先が曲がってしまったら、素人がペン先を触っては絶対いけない。プロに任せてほしい。
冷静になれば当たり前であるが、曲がったペン先を見ると動揺してしまう。大事に使っていても、傷もつくし、落として壊れもする。
今では、修理してもらったデモンストレーターに以前以上に愛着を感じる。
修理したペン先
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万年筆のペン先の素材とは
高級万年筆のペン先の素材は、おおよそ18金または14金である。金は錆びない、腐食しない為、インクに含まれている硫酸・塩酸・硝酸にも耐えられる。また、しなやかさも得られるというものである。もちろん、どの価格から高級万年筆なのかは明確ではない。少なくともペン先はステンレスではないものと考えてよいと思う。
万年筆のペン先は、この金の部分にダイヤモンドに次いで超硬度の耐磨耗性のオスミリジウム(イリドスミン)を熔着している。この素材によって、長期間に耐える書き味を保つことができる。
オスミリジウム
ペン先の先端についている銀色に輝く小さな金属。分子が非常に緻密で、金属で最高の硬さ。
>>>Wikipediaで「オスミリジウム」の詳細を見る
万年筆のキャップは尻軸に装着して使用するかどうかは、個人の好みの問題である
キャップを尻軸に装着するかどうかは、万年筆の軸のどのあたりを中心に持って筆記するかということに大きく関係する。個人的には、軸の中心よりもペン先に近い部分を握る癖があるので、キャップを尻軸に装着するとバランスが悪くなる万年筆が多いような気がする。個人的な使用範囲での印象だが、ペリカンの万年筆はキャップを尻軸に装着するとバランスが良くなる。そもそも万年筆自体が軽量にできているからであろう。
また、尻軸に装着したときの大きさも問題である。ビスコンティのデモンストレーターは、キャップを尻軸に装着すると、長さが17.3cmにもなる。この記事の下で紹介しているアクア・アズーラは、18.4cmにもなる。モンブランの比較的大きな万年筆であるオスカーワイルドよりかなり大きい。
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ビスコンティ『アクア・アズーラ』
アクア・アズーラは、フィレンツェのポンテベッキオ橋中央テラスから眺めたアルノ川の澄んだ青色をイメージしたデザイン。フィレンツェに行ったときに、アルノ川の水の印象はあまりない。
ブルースケルトンのボディはアクリルレジン。クリップ・リングは925スターリングシルバー。大型万年筆。
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軸の長さの比較。ほとんど同じ。
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天冠の比較。
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インクを充填したデモンストレーター
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スターリングシルバーの取り扱い
スターリングシルバーは硫化、塩化によって黒く変色するので注意が必要だ。
アクアアズーラの仕様
本体材質:アクリルレジン
ペン先素材:18K
吸入機構:ダブル・タンク・パワーフィラー
全長:142mm
世界限定300本
特徴:透明感あるブルーの軸
その他のビスコンティ万年筆
イタリアフィレンツェで購入した万年筆